先生と呼ばないで【完】


「さっそく始めてイイ?」



「ええ…そうね」


荷物をベッドの脇に置いて、八神君が用意してくれた椅子に座った。


この前のように角度を決めると、サラサラとキャンバスに描きはじめた八神君。


彼のこの目がすごく好きだった。


情熱的で、真剣で…


この目に見つめられると胸が熱くなるのと同時に幸せな気持ちになれた。



アイスコーヒーを全て飲みほし、中の氷が解け始めカラン…と音が鳴った。


何時間描きつづけただろう。


外が暗くなってきた。


八神君は休むことなく描いている。


彼の顔と首からは汗が流れていたけれど、それを拭う事もしていないようだ。


これじゃあ八神君の体調も心配…


声を掛けていいのか悩んだけれど…



「や…八神君」


「…え?」



私を見た八神君の顔はいつも通りの表情に戻った。



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