先生と呼ばないで【完】
私の作るオムライスは母から伝授されたもので、ウィンナー、キノコ、野菜など具沢山だ。
八神君の口に合えばいーなぁ…
出来上がったオムライスは卵もフワフワとろとろにできて、結構うまくいったと思う。
問題は味なんだけど…
テーブルに置いた料理を見て八神君は喜んでいた。
「めっちゃうまそー!」
「そ、そう?美味しいといーんだけど…」
取り皿とかを用意している私のことを、穏やかな笑顔で見つめてくる。
「なんか…いーな」
「え?」
「小春ちゃんがこんな風に家にいるの、いーなって思って」
「そう…?」
「早く…一緒に住みてぇな…」
その言葉に胸がズキンと痛んだ。
京平に渡された婚姻届を思い出して目の前が暗くなった。
八神くんは私が作ったご飯を、「美味しい美味しい」と言いながら、全部食べてくれた。