先生と呼ばないで【完】


「自分でも甘えてんなぁって思うことは度々あったけど、あん時は自分を止められなくてさ。親父に認められなくて、俺も意地になってたんだよね。そんな甘ったれの俺を陰で支えてくれてたのが家政婦とシェフだったかな…」


そう言って笑っていた。


最初の頃、ただの道楽息子だとばかり思っていた私に言ってやりたい。


本当は繊細で、周りの人のことを思いやる優しい人なんだって。


八神くんを知れば知るほど、好きになってしまう。


彼が後ろ姿で良かった…


私の泣きそうな顔を見られないで済んだから。


皿を洗い終え、私たちは再び二階の八神くんの部屋に行った。


「小春ちゃんまだ時間大丈夫?」


「あ…ええ」


21時か…京平には友達の家に行くと言ってあるけど、かなり怪しまれたし細かく突っ込まれた。

前までそんなに束縛する人じゃなかったのに…

京平の豹変ぶりには驚かされてばかり。


付き合ってしばらく経つのに、京平のこと何も知らなかったんだな…


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