先生と呼ばないで【完】
「えっ」
「なんか今日はもう描きたくない気分でさ」
そんな!! 八神くんと2人で会うのは今日で最後にしようと思っていたのに。
「描きたくない気分…?休憩してもダメなの?」
「うん、今日は無理。そういう日って無理に描きつづけても良い絵描けないんだよね」
そう言って両手を上にぐーんと伸ばした。
「気分転換に水族館に行きたくて。付き合ってくれる?」
“NO”と言わなきゃいけない。
これ以上一緒にいちゃいけない。
でも……八神くんの絵が完成するまでは側にいたいと思っていた。
これで…これで最後にするから。
どうか神様、明日まで八神くんのそばにいることを許してください。
私が『うん』と頷くと、八神くんは『やった~』と大げさに喜んでいた。
でもどうして水族館なんだろう。
理由はなにも言ってくれなかったから、私はただ気分転換がしたかっただけなんだと思っていた。
八神くんがこの時何を考えていたのかなんて、全然わからなかった。