先生と呼ばないで【完】
最後
翌日、私と八神くんは電車で1時間ほどの場所にある、水族館へ向かった。
私は今日も変装してきたけど、昨日よりはいつもの自分に近い格好だった。
ただ、いつもまとめている髪を下ろして、なるべく顔が見えないようにしていた。
「今日の小春ちゃんもいーね。髪下ろすと若くなるじゃん」
八神くんは女の子を喜ばせることを言うのが本当にうまいと思う。
お世辞だとしても、嬉しくなっちゃうもの。
「ありがとう…」
「あ、嘘だと思ったでしょ?マジだから。俺こういうこと普段言わないし」
「そ、そっか…」
それならばこれからは学校でも下ろそうかななんて、一瞬思ったけど…
そんなのは無駄な行為だとすぐに気づいた。
もう八神くんのことを追いかけちゃいけない。
駅に着くと、八神くんが私の手をとって歩き出した。
少し強引な彼の手は嫌いじゃない。
どうせならこのまま、遠くまで…
誰も2人のことを知らない場所まで行きたい。