先生と呼ばないで【完】
駅から5分ほどのところに水族館があった。
平日ということもあって、結構空いている。
これなら知り合いにも合わなそう…水族館の中は暗いし。
「大人2枚」
八神くんがチケット売り場のところで券を買おうとしていた。
私が慌てて財布を出そうとすると、「いーから」と言われた。
「えっ、よくないよ!自分の分は…」
「俺に払わせてよ、彼氏っぽいことしたい」
八神くんを見上げたとき、ドキンと胸が高鳴った。
どうしてそんなに切ない顔するの?
まるで私の気持ちに気づいているかのような…そんな表情をしていた。
でもすぐに、いつものおちゃらけた八神くんに戻る。
私の見間違い?
「小春ちゃん!イルカのショー観よ!あと30分後だって!」
パンフレットを見ながらはしゃぐ八神くんが可愛くて、思わずクスッと笑ってしまった。
せっかく来たんだから、今日はいろんなこと忘れて楽しもう。