先生と呼ばないで【完】

水族館の中は予想以上に暗かった。

人もまばらで、すごく見やすい。

私たちは手を繋ぎながら、ひとつひとつの水槽をゆっくり見て歩いた。


色とりどりの魚、光り輝くクラゲ、大きくて迫力あるマンボー。
見ていると癒されて、日頃の疲れも吹っ飛んだ。

隣に八神くんがいるのだから尚更だ。


「うわっこのマンボー、教頭に似てねぇ⁉︎怒った時口とんがってさぁ〜」


「アハハッ本当だぁ」


普段は絶対そんなこと言えないけど、ここならいいよね…
ここでなら、教師と生徒じゃなく普通の恋人同士になれる。


どうして彼と同い年じゃなかったんだろう。

どうして彼の教師なんだろう。


こんなこと何度も思った。


でも考えてもしょうがないことで、もし教師と生徒じゃなかったら出会えなかったかもしれない。


出会わなかったら…こんな辛い思いしなくてすんだのかな。


ううん。


出会わなかったら、こんな楽しくて幸せな気持ちにならなかった。


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