先生と呼ばないで【完】
ふっと横を見ると、ショーを真剣に見入っている八神くんがいた。
意外だった。八神くんもこういうの好きだったんだ…
彼と知り合ってまだ日が浅いのだから仕方がないけど、私は八神くんのことを何も知らない。
もっと沢山話をして、どんなことが好きなのか、逆に何が嫌いなのか知りたい。
でも…私たちにそんな時間はない。
「親父との思い出ってさ…この水族館に来たことだけなんだわ」
突然八神くんがお父さんのことを口にしたので驚いた。
お父さんのこと聞かれるの嫌なのかと思っていたから…
「小さい頃?」
「ああ。小学生の時…親父はいっつも忙しいからどこかに出かけるってことがなかったんだけど。なぜかその日は2人でここに来たんだ。2人で遊びに行くことなんてそれ以来なかったけどな」
「そうなんだ…」
「俺すげー嬉しくて…めっちゃはしゃいでたの覚えてる」
八神くんは穏やかな表情で話す。
きっとその日はすごい楽しかったんだろうな。