先生と呼ばないで【完】

「親父と見たイルカが忘れらんなくてさ。時間がなくてこーいうショーは観なかったけど、でかい水槽で優雅に泳ぐイルカを見たの覚えてんだ」


「それって…あのBARの絵?」


私を見てニヤッと笑う。


「さすが〜!その通り。あれは親父と見たイルカだよ」


「そうだったんだ…」


お父さんと一緒に見たイルカをずっと鮮明に覚えているなんて…
八神くん、本当はお父さんのことを大事に思ってるんだよね…?


「その時俺も初めて見たからすげー感動してさ。あまりにもイルカが綺麗すぎて。珍しく親父も見入ってて、言わなかったけどもしかしたらあんな冷酷な親父でも俺と同じ思いでイルカを見てたんじゃねーかなって思ってさ」


「うん…きっとそうだと思うよ。あの絵を見た時、私も動けなくなったもん」


あまりにも綺麗で、涙が出たんだっけ。


でも綺麗だけじゃない、どこか寂しげな…そんな感じもした。



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