先生と呼ばないで【完】
「小春…」
廊下の外にいたのは、京平だった。
心配そうに私を見つめている。
「お前…泣いてるのか?」
私に近づき、頬を触ろうとしたがそれを手ではね退けた。
「やめてよっ…」
きっと心の中で私のことを嘲笑っている。
生徒と関係を持つなんて…それみたことかと、思っているに違いない。
京平の顔を見ずに、私はその場を立ち去った。
誰もいない視聴覚室に入った。
ここなら…多少の泣き声は聞こえないはず。
ふっと思い出す。
ここで八神くんと初めて会った日のこと。
寝ぼけ眼で私を見ていた。
なんて綺麗な子なんだろうと思った。
私はきっとあの時から八神くんに惹かれていたんだ。
教師失格だね、初めからあなたに惚れていたなんて。
涙が次々と溢れ出てきて、目頭を押さえているのに止まらない。
どうして突然休学だなんて…もしかしたらそのまま卒業ということもありえるかもしれない。
学校はあなたとの思い出が沢山ありすぎてつらい。
忘れようと思っても、忘れられるわけがないよ。
八神くんはすぐに忘れられるのかな…
次の時間はちょうど授業がなかったから、私はしばらくここで気持ちを落ち着かせた。