先生と呼ばないで【完】
『ありがとう。でももう決めたから。斎藤先生、もう俺のことなら気にしないでいーよ。大丈夫だから。今まで色々迷惑かけてごめんね』
心臓が引きちぎられそうになった。
私のこと今までずっと『小春ちゃん』って呼んでいたのに…
注意しても、やめなかった。
なのにどうして急に『斎藤先生』なの…?
『斎藤先生と過ごせて楽しかった。本当にありがと』
な…なにそれ…
なんで⁉︎
『悪いけど忙しいからもう切るわ…』
プツッと、一方的に切られた。
私はスマホの画面が暗くなっても、ずっとそれを見つめていた。
すぐにまたかかってくるんじゃないかって気がしたから。
八神くん、ふざけること多かったし。
しかし、電話はかかってこなかった。
頭が真っ白になって、体が動かない。
八神くんと離れることを望んでいた。
でも、こんなに突然…学校でも会えなくなるなんて…
魂が抜かれたような…体に力が入らない。
私はベンチに座ったまま、ぼーっと正面を見つめていた。