先生と呼ばないで【完】
アパートに帰らなきゃ…
京平のごはんも作らなきゃないし、今日は掃除もしたかったのに。
頭ではわかっていても、体がベンチにへばりついて動かなくて。
腰が抜けちゃったんだろうか。
その時、誰かが走ってくる音がした。
もしかして…八神くん⁉︎
勢いよく振り返ると、そこには息を切らした京平がいた。
「小春っこんなところにいたのか!」
京平をみて、ガックリ肩を落としてしまった。
でも探してくれていたのか、汗だくになっている。
私の姿を見てホッとしているようだった。
「小春…帰ろう」
差し伸べられた手を、私は見つめていた。
この人と結婚しようと思った。そしたら八神くんの夢の邪魔もされないだろうって。
でもそんなの、無意味になったんだ。
「私…もう無理。京平と結婚できない…」
「小春…」
京平の前で、初めて子供のように泣いてしまった。