先生と呼ばないで【完】
京平は私の横に座り、泣きじゃくる私を抱きしめた。
あんなに憎かったのに、すごく優しい手をしていて、暖かかった。
一瞬、昔を思い出す。
京平に告白されて嬉しかったこと、付き合ってて楽しかったこと。
それは嘘じゃなかった。
でも……今ならはっきりとわかる。それは恋愛感情ではなかったんだと。
面倒見の良い京平は兄のようで、私は居心地がよかった。恋愛経験がほとんどなかったから、これが〝好き〟ってことなんだと、勘違いしていたのかもしれない。
でも八神くんは違う。
彼と会うと胸が高鳴って、熱くなって、愛おしく感じて。
少しでも離れている時間が辛くて。
これが本当に好きってことなんじゃないんだろうか。
そんなことを、私は京平の腕の中で思っていた。
「冷えるし、うちに帰ろう。俺も話したいことがあるから」
いつにもまして優しい口調の京平に驚いたけど、私は言うとおりにした。
私もちゃんと話さなきゃいけないよね。