先生と呼ばないで【完】
アパートに帰ると、夕飯が用意されていた。
私の好きなカルボナーラのパスタ。
京平はどんな思いで作ってくれたんだろう。
「とりあえず…飯食えよ」
「うん…」
食事中はお互い無言で、テレビのバラエティ番組のにぎやかな笑い声だけが食卓に響いた。
京平の作ってくれたカルボナーラは相変わらず美味しかったけど、私は食欲がなくて完食することができなかった。
「小春、本当にもう無理なのか?」
話を切り出したのは京平の方だった。
私はゆっくりと頷く。
「こんな気持ちのまま、結婚できない。八神くんのこと気になるのに京平の奥さんになるなんて、無理だよ…」
「そんなの承知の上だよ。八神じゃお前を幸せにできるかわからない。あいつはまだ若いし、この先色んな人と出会って小春のことなんかすぐに忘れるかもしれない」
「うん、わかってる。それでも…いいの」
はぁと、ため息をついた京平は皿を重ねてキッチンへ行ってしまった。