先生と呼ばないで【完】
「ありがとう…私…」
「生徒に八神との噂をされちゃ、お前も学校に居づらいだろ」
「うん…」
「卑怯な手を使おうとしたお詫び。渡した婚姻届も捨ててくれないか」
「京平…ごめんね」
どうしてちゃんと京平のこと、好きになれなかったんだろう。
こんな事させたのも、元はと言えば私のせいなんだよね。
もっと早く気づけばよかった。
八神くんに出会う前に…
京平に私たちのことを承諾してもらったからって、京平を差し置いて付き合うとかできない。
「俺に謝るくらいなら、幸せになってほしい。八神とはちゃんと話したのか?」
私は首を横に振った。
「まさか親の方から急に休学させてほしいと言ってくるなんてな」
「詳しい理由は私にもわからなくて…八神くんも教えてくれないから…」
電話での素っ気ない態度、もう私の事はなんとも思わなくなったのかな。
この前くれたチャームは、お別れのしるしだったのかもしれない。
ポーチに付けていたチャームをぎゅっと握りしめた。