先生と呼ばないで【完】


「八神君ってどんな子なの?」



「あー。世界各国にホテルを所有してるYAGAMIグループの跡取り息子らしい」



世界各国…


要するに甘ったれの道楽息子ってことなのね。



でも更正させることができたら私の評価も上がるらしい。



そう言われてちょっとはやる気がでたんだけど…



「まぁ、なんかあったらオレに言えよ?」



京平は吸っていたタバコを携帯用の灰皿の中に入れて消すと、私の頭をポンと撫でて布団を被った。



松原京平は私の彼氏で、同じ学校に勤務している教師だ。


大学の先輩だった京平とは、飲み会で知り合い、去年付き合うことになった。
学校には内緒だけど、京平がいつもそばにいてくれると思うと、すごく心強くて。



今年、初めてクラスの副担任になった私は、この一か月、生徒の名前と顔を覚えるだけで精一杯だった。


八神隼人とは何回か会った事があるくらい。


廊下側の後ろから2番目が彼の席。


授業はたまにしか受けていないらしく、私の担当の英語の時なんてまだ一度も姿を見せたことがない。




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