先生と呼ばないで【完】
そう言った彼の顔が、どこか寂しそうで。
こんな顔…今まで見たことない。
「だから今のうちに遊ばせてよ…」
その時、BARに飾られてあった絵を思い出した。
「…あのイルカの絵、あなたが描いたんでしょ?」
「…イルカ?」
「BARに飾られてあったのを見たの。すごく素敵な絵だった」
八神君の顔が微かに歪んだ。
「ああー…あの絵…」
そう言ってフッと笑う。
「夢、あるんでしょ?本当は画家とかになりたいんじゃないの!?」
「…そんな夢持ってたって、何にもならない」
…どうしてそんな寂しいこと言うんだろう。
彼はまだ10代で、今が一番夢膨らむ時期なのに。
「八神君は才能あると思う!だって私、初めてあの絵を見たとき、すごく興奮したの。こんな綺麗な青、見たことないって。だから……また描いてほしいと思った」