先生と呼ばないで【完】
「てめぇ………服伸びただろうがよっ…」
クラブの前で超不機嫌モードで睨まれた。
でもそんなのに怯んでられない。
「素直に歩かないのが悪いんでしょ!?とにかく、今日は私と帰ってもらいます!」
近くを通ったタクシーを捕まえ、無理やり八神君を乗せ、自分も乗った。
タクシーの中で八神君は「信じらんねぇ…乱暴な女」と、ため息交じりにつぶやいた。
何とでも言うがいいわ。
それから彼はずっと窓の外を見ていて、何も話をしなかった。
この年頃の男の子って…難しい。
何を考えているのかわからない。
どうして急に彼は絵を描かなくなったのか。
そんなこと聞いたって教えてくれないだろうけど。
一度でいいから筆を持っている八神君を見てみたいと思ってしまったのは事実で。
なんとかして彼を絵画の世界へ戻してあげたいと思った。