先生と呼ばないで【完】
イーゼルの上に置かれた、布で覆いかぶされている絵。
そっとその布を取ってみると。
そこには綺麗なマリア様の下絵が描かれてあった。
綺麗……
これはきっと最近描いたものだと思う。
八神君、また絵を描き始めたんだ…
それだけで、すごく嬉しくなった。
「なに勝手に人の部屋入ってんの?」
びくっとして後ろを振り返ると。
ドアの所に寄りかかって不機嫌そうにこっちを見る八神君がいた。
「あっ…ご、ごめんなさい…」
「しかも勝手に人の物触ってるし」
「キャンバスが見えたからつい……八神君、また描き始めたんだね!?」
「……急に描きたくなったから描いただけ」
「そっか…これ油絵?」
嬉しくなってつい顔が緩んでしまう。