先生と呼ばないで【完】
「どうする?」
私は震える手でそれを受け取った。
「・・・少し時間をくれない?」
「俺はいつまでも待てないからな」
そう冷たく言い放ち、パソコンに向き直った。
・・・言葉が出ない。
こんな事をする人だと思わなかった。
完成した絵を見たら、きっと京平も考えを変えてくれると思っていた。
甘い考えだったのかもしれない。
この数年、私は京平のどこを見てきたんだろう。
バッグの中に婚姻届を入れた時、携帯に着信がきていたことに気づいた。
・・・八神君・・・
絵を見て驚いているだろうな。
私は重い足取りで美術室へ向かった。
するとその途中で八神君が階段を下りてきて。
「・・・なんて顔してんだよ」
そう言って笑ったから、思わず私の目に溜まっていた涙がこぼれてしまった。