先生と呼ばないで【完】
「うん、大丈夫。私も数日休むことになったけど、ちょーど良い骨休みだと思うことにしたからっ」
明るく言ったら、八神君も安心してくれたようだった。
『じゃさ…その骨休みの時に申し訳ないんだけど、またモデルやってくんない?』
「え?あ…この前破かれちゃったもんね…」
『うん。締め切り間近で結構ヤバイんだよね…明後日から親父海外出張でいねーから、うちでどう?』
「そっか…うん、すごい変装していけばバレないと思う」
『すごい変装って…』
受話器越しに八神君の笑い声が聞こえた。
「完璧別人になりすますから、楽しみにしてて」
彼の笑い声が余計に胸を締め付ける。
これが切ないということなのだろうか。
この絵が完成したら、2度とふたりで会わない。
生徒と先生に戻る。
そして私は京平と結婚する。
そう心に決めたのに、こんなに喉の奥が痛くなるなんて…
私はトイレの中で声を殺しながら泣き続けた。