人間狩り【編集中】






 千春は目を覚ましていない。


 青白い顔と、魘されたように時折声を漏らす。



「ちぃ…」



 陽菜が千春に声を掛けると、



「お前…まだフラフラしてんのに大丈夫なのかよ」



 光太がそう言った。



「大丈夫」



 本当は、色々な面でキツくて、とても大丈夫とは言えない状態だったが、平然を装った。どうしても、嘘をつかなければならなかった。



「…くっ」



「ちぃ…?」



「はぁっ」



 千春の呻き声。きっと、美琴と亜里沙の最期が焼き付いて離れないのだろう。



「いや、だっ」



 汗でぐっしょりと衣服を濡らす千春。


 陽菜は自らのハンカチで、千春の顔の汗を拭き取った。千春の細い体が小刻みに震えている。



「っ!」



 千春がパッと目を開けた。



「ちぃ!」



「藤沢!」



 陽菜と光太は同時に声を出した。



 体育館の中心にいるクラスメイトたちは、陽菜たちに目もくれず、ざわざわしている。話題は、死んだふたりのことだった。



「私…」


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