人間狩り【編集中】





 千春は体を縮こませ、鳥肌の立った腕を擦る。


 人を殺して、ニッと口角を上げて薄笑いしている百合香は、千春たちの知ってる大人しくて優しい女の子ではなかった。


 千春は、百合香が異質な存在のように見えて、怖かった。



「うん、死んでる」



 繭が息をしていないことを確認し、百合香は繭から離れて立ち上がる。




 繭に近付いた時に付着してしまったのか、彼女の頬には…少量の赤い液体がついている。







「次は…あんたね」



 百合香は目を光らせる。




 銃口は隆太郎に向いた。



「っ!」



 隆太郎は後退る。その右肩には、繭の血飛沫が染みていて、紺色のブレザーを濃くしている。



 ふたりの距離はたった、2メートルくらいしかない。



 隆太郎の顔は、真っ青だった。



 (俺は、小日向に殺されるんだ。今まで小日向を侮っていた罰を、受けるのか)



 自分の命が絶えたら、この魂はどうなるのだろう。完全に消滅するのだろうか。それとも宛もなく、冥界を彷徨うのだろうか。



 百合香の持つ弾の出口を、まるで吸い込まれたかのように見つめた。



 彼は、彼の体は、その時まで、生きたいと願っていた。




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