人間狩り【編集中】




 千春は、走り出し、体育館を出た。無我夢中で、陽菜のことしか考えられなかった。まるで、メロスのように、一度も止まることなく、目的のトイレまで駆けた。



「陽、菜…」





 トイレに、うずくまる陽菜がいた。個室に入らず、入り口でしゃがんでいる。



 ぜえぜえと息を切らす千春は、陽菜を見下ろす形になる。




「ちぃ」



 千春の目をジッと見て、陽菜は口を開く。



「光太は」


「光太くんは…」



 しかし、陽菜にそのまま伝えて良いのか分からず、紡ぐことができない。



「放送は、本当なの」


「陽菜…聞いてたんだ」


「何で、光太は放送室なんかに。あたし、止めたのに」



 陽菜は、遠回しに千春を貶した。


 ────どうして光太を止め切らなかったの、と。


「ぁ…」



 陽菜の、炎に駆られたような瞳。



 (陽菜が、何を思っているのか分からない)



 どこかで期待してたのだ。千春のことを、赦してくれるのではないかと。光太が、頑固一徹なのはよく知っているはずだから。



 陽菜は、俯いた。そして、立ち上がり、千春を見ることもなく歩き出す。



「もういい。行こう」




 千春は、絶望の波に襲われた。






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