人間狩り【編集中】
20年前。確かに、日本中を震撼させた、未曾有の大事件が起きた年である。
当時、まだ生まれていなかった千春や、クラスメイトたちも当たり前のように知っている事件のことだった。
「その事件で、女の人が雑木林で消息を絶ったの。犯人も捕まってなくて、けど、槍と、銃と、女の人の────血痕が見つかって」
中1の時の千春にとってその本は印象的で、今も鮮明に覚えている。
「だから、槍と銃で殺されたってことになってるけど、肝心の遺体が見つかってないから、今もどこかで生きているかも…って終わり方だったかな」
その話をしている時、心の苦しみから少し解放されたような気がした。もしかしたら、千春自身の感情が限界を超えてしまったのかもしれないが。
「確かに、“槍と銃”っていう凶器は酷似してるけど、関係はないんじゃないと思う。それ、この辺で起きたの?」
『雑木林』を事細かに話す千春に、苦言を呈したのは優香だった。
確かに、話しておいてなんだが千春も因果関係がないように思えた。貴重な時間を奪ってしまったみたいで、落胆する。
「う、うん。えっと、隣の県だったはず」
そこで、『雑木林』に関する話題は終わった。