時空を越えた先に君がいた。



じっとしているわけにもいかない。


そう思った私はゆっくりと歩き出した


足音を消すように
そっと、ゆっくりと歩いた



枝を踏んでしまって

バキッと
音がなるたびに心臓が跳ね上がる



バキッ


「⁈」


…あ、また枝踏んだのか……。



足元をみて安心していると



「よっ!異世界のヤツ!」


急に声がした



今までで1番大きく心臓が跳ね上がる



「なんだよ。驚きすぎじゃねーか?」


振り返るとそこには


さっきネオに追われて行ったはずの


カイが居た。



「な、なによ?ネオは?ネオはどこ?」


私は目の前にいるカイに
少し動揺しながらも睨みつけた



「お前っていい目するよな」


カイは笑いながらそう言ってきた



「は?」


「心配するな、ネオは今頃町で俺を探してる」


「あんたは町に行かなくていいの?」



「あぁ、今日は暴れる気がしねーの!」


カイは背伸びをすると
口の端をキッとあげ八重歯をみせた


「じゃあさっきのは嘘ってこと?」



「そうなるな、そうでもしねーとネオがお前から離れないと思ったから」


「くだらない」


目の前にいるカイは
人間を殺す鬼。


そう分かっていても
人間と変わらない姿で
今は何もしてこない
そのせいか警戒心が薄れてきた。

…油断はいけないの分かってるけど


カイみてると敵とは思えないよ…


私は複雑な気持ちのままカイを見つめた



赤っぽい髪の毛がサラサラと
夜風に乗る


鋭く輝いた瞳が
薄暗い場所でも光って見えた


背は私よりも全然高くて


チラチラ見える
八重歯が印象的だった


クラスにいたら
絶対モテる男子だろうなと考えていた



「お前の名前は?」



「舞花だけど…?」



「ふーん。舞花ね」


カイは私の名前を数回繰り返し呼ぶと
笑顔でいい名前だなと褒めてくれた



…目の前にいるカイは
本当に人間を殺す鬼なの?


そう惑わされるほどの笑顔だった。



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