ココアとコーヒーを保健室で。



ただ、と前置きして咳払いをする先生。

「ただ?」

「好きな人に好きな人がいなくて安心してる。」

言い終わった後に私をじっと見る。

「……そ、それじゃあ、ちゃんと告白しなきゃ、デスネ。アハハ……。」

笑って誤魔化そうにも、先生の瞳から逃げられない。

「な、なんです、か?」

先生の真剣な瞳に負けた。つい先生を見つめてしまう。私が真剣になったのに気付いたみたい。急にイスから立ち上がって紙とペンを持ってきた。サラサラと何かを書いた紙を差し出す。

「え……?」

紙に書かれた言葉に私は驚いて先生を見た。

「先生、本気ですか……?」

「あぁ。」

紙に書かれた言葉は……。

“お前が好きだ”

もう一度紙を見た後に先生を見る。先生は私の答えを待っているようだ。

「せ、んせいがす、好きです。」

「それは、異性として……?」

「そうです。」

これ以上、口にしたら誰かに聞かれるかもしれない。先生からペンと紙を奪って、私は先生の字の下に書き足した。

『高校入学して、保健委員になってからずーっと好き。』

『オレも。でも、好きな人いないって言ったよな?』

『先生を困らせたくなかった。先生と生徒だから。』
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