【短編】ing
「聞くだけ聞いてほしいことがあるの……」

私の喉も、緊張も限界だった。
自分の気持ちを伝えるのって、こんなに難しいことだったなんて、思ってなかった。


「―――私…好き、な…の……。
杉谷君のことが、すごく」

杉谷君はこっちを向いたまま座っているから、私は俯いたままで。
しゃべろうとして口を開けたけど、上手く開かなかった。


「…だから、…一緒、に、勉強…できそ…にないの」


一言一言口にするのがやっとだった。


まともに顔をあげられない。
汗が全身を伝う。

そんなとき、私の手にのっかったのは、杉谷君の手だった。


「俺だけ空振りしてんのかと思ってた………」


顔をあげると、耳まで真っ赤になった杉谷君の顔があった。


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