愛し君へ、愛をこめて
派手派手コンビは健在デス
曇天。
屋敷の廊下を歩くひとりの青年が、空を見上げ顔を渋めていた。
そこへ、ひょっこりと現れる白い猫。
「にゃおん」
「…なんや、あんさんかいな。どっか行きぃ。あんさんと遊んでやるほど僕ァ暇やないんや」
しっしっ、と手を振る青年に、白猫はもう一度「にゃあご」と鳴いて彼の足下にすり寄った。
「可愛く鳴いてもあかんで。ちゅーか可愛ないし、姐さんのが断然べっぴんやし」
「…ほんと君は、姐さんが大好きだね、鶴」
それも呆れるほどに。と、そう呟いたのは足下にいる白猫だ。
赤い瞳をくりくりとさせ可愛らしく見上げる白猫は、一見するとただの猫にしか思えないだろう。
しかしそう思うなかれ。
実を言うとこの白猫、三大悪魔のうちのひとりであるのだ。
その通り名は【嘘つき悪魔】。
本人いわく、今は昔ほど酷くはない、だそうだ。