愛し君へ、愛をこめて
「ないわ。だって私は…」
そこまで言いかけ、その女性は目を伏せた。
きっとその彼との過去を思い出しているであろう彼女は、ヴェール越しに遠くを見つめた。
「愛しているから。和寿(かずとし)さんだけを、ただ愛しているの」
「…そうか」
彼女の瞳は、諦めることなく生気に満ちている。
まさか自分が死んでいるなんて、思いもしないだろう。
きっと彼女は呪縛霊。彼を忘れられず、今こうしてこの教会に留まっている。
なんて哀れな、なんて不憫な。
そう思わずにはいられない。
気づけばカルハは、彼女の隣に立って同じようにステンドガラスを見つめていた。