愛し君へ、愛をこめて
君は死んでいるのだと、この女性に伝えるべきか。
このまま一生ここに留まるのは、あまりに酷だ。けれど。
「こんな綺麗な花嫁さんに恵まれるなんて、花婿はさぞかし鼻が高いだろうね」
「そんなこと無いわ。むしろ、和寿さんと結婚できることが夢のよう。…私、本当に彼が大好きなの…」
「ああ、彼を語るとき、君は本当に生き生きしているよ」
こんなにも『生きている』彼女を地獄に叩き落としたくはない。
まだ、彼女は諦めていないのだ。
信じているのだ、彼のことを。
愛しているのだ、彼のことを。
くすんだウェディングドレスだけれど、ぼろぼろのヴェールだけれど、手折れそうなブーケだけれど。
この花嫁が何より、美しいとカルハは感じた。
死なすには、いや、殺すにはあまりにも勿体ない。