愛し君へ、愛をこめて
鶴嫁怪(つるかけ)は決めた。
この男は浄霊してやらないと。
元より、強い『気』に引かれて鶴嫁怪たちはここまで来たのだ。
強い思いに引かれてなど。
いつものように怨霊の仕業かと思ったが、実際はその逆だった。
こんなにも純粋に『愛に生きている』男を見て、鶴嫁怪は死なせたくないと思ったのだ。
「せや、あんさん、名前なんて言うんや?」
「あれ、教えてなかったかい。
俺の名前は【三隅 和寿】(みすみ かずとし)。君は?」
「僕ン名前は【鶴嫁怪】(つるかけ)や。よろしゅう。
…なあ、三隅はん。僕が三隅はんの思い、叶えたるさかい。時間はかかるねんけど、いつかその彼女はんと会わしたる。せやから、」
「?」
「せやから今は、僕があんさんの名前呼びますわ。三隅はん、これからも生きてぇな」
「!……、ありがとう」
三隅は目を細め、清々しい笑顔で礼を口にする。
鶴嫁怪もまた笑った。
約束だ、と。