愛し君へ、愛をこめて



「【榛名 樒子】(はるな しきみこ)。…それが私の名前」

「樒子(しきみこ)か。また随分と可憐な名前だ」


古びた教会。
大きな白像の前で彼女は口を開く。


「私、ずっと待ってるわ…。彼に名前を呼ばれる日を。ここで、ずっと…」


ブーケに目を落とし、樒子は僅かに微笑んで想い人を脳裏に描いた。

カルハにとってもその光景は微笑ましく映り、彼女を応援したいとも思えた。


「そうだね。それじゃあ私もこう呼ぼう。樒子(しきみこ)、と。
君の名前を呼ぶのは彼だけじゃない。私もいる。君には彼しか見えていないだろうが、私の声も届くと嬉しいな。
樒子、がんばれ」


それが何に対する『がんばれ』なのか。きっとそれは、彼女らにしか分からない。

そうして樒子も口角を上げてこう言うのだ。

がんばる、と。
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