愛し君へ、愛をこめて
毎回のように服装についてあれこれ言う鶴に、少女の顔もまた歪む。
「…そういう君も、またいつもと変わらず随分と派手な格好をしてるじゃないか、鶴」
じっとりとした視線の先には、この和を象徴した屋敷にぴったりな着物。
朱色をベースとした着物には二匹の鶴が描かれており、ところどころに金箔が散りばめられている。
そして手には同色(朱色)の扇子。こちらも金箔が散りばめられているが、描かれている柄は鶴ではなかった。
鶴の代わりとして描かれているのは【さんざし】の花。
鶴が言うには、「姐さんの好きな花やから」「これで姐さんとずっと一緒や」らしい。
どこまで姐さん好きなのだ。
「べ、別に僕の格好は普通やろっ。あんさんよりはマシやさかいっ」
「ふ、ぅうーん。普通、ねえ?」
少女の視線は着物でなく、今度はその上…、鶴の髪へと向いた。
「君の、その、頭で、普通、ねぇえ?」
「うっ…」