愛し君へ、愛をこめて
場面は移り。
ひとしきり暴れた鶴嫁怪(つるかけ)と、戯れ程度に遊んでやった悪魔少女は縁側で腰を落ち着かせていた。
「くっそ…、なんでひょいひょい逃げよるんやテメェ…」
「鶴、口が悪くなってるよ。二人称が『テメェ』になってる」
「るっさい黙れ似非紳士」
「それは私の口調のことを言っているのかい?いただけないなあ、少なくとも私は女性だよ?」
「姐さん以外は女やと思ったことあらへん」
「それはそれでどうかと」
呆れ声で鶴嫁怪に視線を移す悪魔少女に、突如として鶴嫁怪は声をかけた。
「…おい、なんや近くでえらい不快な『気』がしとんで。【カルハ】、出かける準備しぃ」
「はいはい。悪者退治が君の仕事だからね」
どうやら悪魔少女の名前は【カルハ】というらしい。
「ええか?絶対に一般市民を傷つけるんやないんで」
「もし傷つけたら?」
「…怒る」
「ぶはっ、可愛い罰だね」
「笑うなアホ!ええから傷つけるんやないでえ!」
「オーケィ」
ガツンっ。
二人はお互いの拳をぶつけ、儀式のように毎回ながら、屋敷を出るなり門に頭を下げたのだった。