【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
タイミングよく鳴りだした携帯に少し慌てて取り乱す。
待ちに待った連絡なのに。
ちょっと後ろめたい気持ちを抱えたまま、通話ボタンを押す。
「もしもし、隼人?」
「ごめんな、なかなか連絡できなくて。凪咲、今からちょっと時間ある?」
久しぶりの声に思わず顔がほころんじゃう。
浮気発言は撤回するから、ね。
「うん、一日中暇だよ〜!」
「じゃあさ、会社の近くのこの前の川に来てくれる?」
「分かった、15分ぐらいで行くね!」
「じゃ、先に行って待ってるな」
プッ……プープープー。
あ〜あっ、切れちゃった。
ま、いっか。
今から会えるし。
化粧しててよかったぁ〜。
その分早く会えるしね!
後は服だよな〜。
いつも迷っちゃう。
やっぱり隼人にはいつも可愛く見られていたいし、気が抜けないんだよね。
悩みに悩んで選んだのは、私のお気に入りの白いふわふわのワンピースに薄い紫のカーディガン。
この色……
隼人にもらったこの花に似ているなぁ。
そんなことを思いながら選んだ服を身に纏い、私は軽い足取りで待ち合わせ場所へと向かっていった。