【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
さっきまでの怒りなんて、綺麗さっぱりどこかに飛んでいってしまった私。
恐る恐る隼人に話し掛けてみた。
「はや……と……?」
「このバカッ!!」
バ、バカ?
突然「バカ」って言われて、訳もわからずにその場に硬直。
……そんな私を見ていた隼人は、だんだんと穏やかな顔になっていく。
「ったく、自覚なさすぎなんだよ」
ふぅっとため息混じりにそう言った隼人は、私の手をギュッと握り締め、そっと自分の頬にあてた。
隼人の指から伝わる体温。
少し髭の伸びた頬の感触。
私を見つめる熱い視線。
すべてが私の心をくすぐり、激しく胸が高鳴りだした。