【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−

私は店員さんの後ろをついていき、お店の中の休憩室のような所に通された。



「どうぞ」


「ありがとうございます」



差し出されたオレンジジュースを一口飲んだところで、店員さんは話し始めた。



「佐倉さんね、始めは真っ赤なバラの花束買いに来たんですよ。彼女に渡したいって少し寂しげな表情で……ね」




真っ赤なバラの花束……。


隼人、私のために?


覚えてくれてたんだ……。


そんな事実に、堪えることができず涙を流す私に、店員さんはそっとハンカチを差し出してくれた。



「あまりにも元気がなかったから、元気づけたいなぁと思って、私、自分の好きなこの“勿忘草”の話をしたんです」




店員さんは勿忘草を優しく見つめ、その時のことを私に聞かせてくれた。





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