【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
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「この花知っています?」
「いえ……」
「この花、勿忘草って言って私の大好きな花なんです!」
「わすれなぐさ?」
「えぇ。その花言葉は“真実の愛”とか、“私を忘れないでください”って意味があるんですよ」
「へぇ〜、私を忘れないでください……か」
「私、この花の伝説に心を打たれて。それから私の一番好きな花なんです!」
「伝説? よかったら聞かせてくれないかな?」
「もちろんいいですよ! ドイツの伝説なんですけど……」
――昔、恋人同士の騎士と乙女がドナウの川岸を散歩していました。
乙女はドナウ川の岸に咲くこの花を見つけ、それをとても欲しがりました。
騎士は恋人の願いを叶えたいと思い、その花を採ろうと試みました。
しかし、あやまって川の急流に飲み込まれてしまったのです。
その時、自分が助かる見込みがないと悟った騎士は、最後の力を振り絞り恋人に花を投げました。
「私を忘れないで!」
と叫びながら。
そして、騎士は流れに吸い込まれて死んでしまったんです。
その後――……。
乙女は騎士との約束を守り、生涯その花を髪に飾り続けたという……。
「死んでしまうのは嫌ですけど……はかりしれない愛を感じません?」
「そうだな……うん。じゃあ、その花一つラッピングしてくれない? 後、いくつか植えたいと思うんだけど、あるかな?」
「ありがとうございます! 彼女にですか!?」
「あぁ……。その騎士と同じ思いってとこかな」