【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
連れて行かれた先は、勿忘草の花壇。
太陽の光を浴びて花は空を見上げ、小さくて可愛い花なのに力強く咲いている。
男性は花壇の端っこを掘りはじめると、小さな箱を取り出した。
その箱を開けろと言わんばかりに私に差し出してきて、私は蓋を開けてみた。
種……?
「勿忘草の種ですよ。佐倉さんに頼まれたんです、この花を咲かせ続けてくれないか、と」
隼人が?
「自分の思いをここに置いていくと言っていました。きっとあなたに向けてだったんですね?」
そして男性は頭を軽く下げた。
「すみません突然。ただ、あなたが彼の想い人だと感じたら、いてもたってもいられなくなって……。違いました?」
「いえ、多分……私です」
少し俯きがちになりながら喋る私に、安堵の表情を見せる男性。
「よかった。あっ、そうそう、あなたは知っていますか? 勿忘草の花言葉を」
「はい、さっき知りました」
『真実の愛』
『私を忘れないでください』
隼人……。