【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
「隼人ごめんね。スーツ汚れちゃった……」
押し倒したときについた草や土。
パンパンッて叩くけど染み付いて中々取れない。
一生懸命取ろうとすればするほど汚れは拡がっていき、なかば半べそ気味の私に、
「じゃあ、着替えたいから家来るか?」
怒ることなく優しい言葉をかけてくれる隼人。
もちろん……。
「行くっ!」
たったそれだけの言葉で、私はあっという間に笑顔になる。
……隼人が怒るのは私を心配している時だけ。
普段は私のことを気遣ってくれて、怒ったりしないんだ。
そんな優しい隼人が大好きだよ。
好きって気持ちで胸がいっぱいになる。
高鳴る胸を感じながら、不意に隼人の顔を見上げてみた。
その時……。
ホントに一瞬だけど、
隼人の顔が曇っていたような気がしたんだ――……。