【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
バレバレの照れ隠しだけど、隼人から逃げるように私は小走りで庭園に駆けていった。
そこには赤やピンクのツツジが、少し顔を出した月の明かりに照らされて、色鮮やかに咲き誇っている。
……あれっ?
「ねぇねぇ隼人〜! この花って何〜?」
ツツジに隠れるようにひっそりとある花壇に咲いている花。
青いような紫のような色をした小さな花。
五枚の花びら。
そっと触れてみた葉っぱは柔らかくて、その花は小さくてとても可愛い。
「……あぁー、その花はこのマンションの住人が植えたらしいよ」
「ふ〜ん、そうなんだぁ。可愛いね、この花……」
何でだろう……?
なぜかその花が気になって仕方がない。
小さなその花は可愛かったけど。
花の可愛らしさとは対称的に、儚く寂しげに見えてしまうのは気のせいなのかな。