Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 石原のような人がいればよかったのに…….とも思うが、石原の代用品は石原本人ではない。

 それに、石原も最初に会ったときには特に何にも感じなかった。逆に、髭を見てギョッとしたくらいだ。石原の前に付き合っていた相手は、石原とは全くタイプが違う。


 要するに、見た目とか自分が思い込んでいる好きなタイプとかは関係なく、その人と関わっていく中で好感というものは育っていくものなのかもしれない。

 このお見合い写真の人の中にも、写真の印象とは違い、そんなふうに想える人物がいるかもしれない……。


 でも今のみのりは、石原への切るに切れない想いと、日々の仕事の忙しさで、これ以上何かをしよう、動き出そうというエネルギーさえなかった。


「みのり。ちょっと外からおネギを採ってきてくれない?」


 喜美代が台所から大声で呼ぶと、みのりは気を取り直して立ち上がった。


「うん、今日の晩御飯は何?」

「そうめんにしようかと思って。お父さんが食べたいんだって。」

「えー、そうめんだけ?それじゃ、栄養が足りなくない?お父さん、今は体を使ってるんだから、もっとちゃんと食べないと!」


「そうねぇ……」





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