Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




「お母さん、そうめんと天ぷらにしようよ。私、作ってあげる。」



 台所に並んで立つ母と娘を、隆生は微笑みながら眺め、スイカの最後の一口を頬張った。



 実家で1週間ほどゆっくりしようと思っていたみのりだったが、古庄からの電話が入り、たったの3日で学校へ戻らなければならなくなった。


 夏休みの終わりに行われる文化祭の準備を、手伝ってほしいというのだ。

 3年前は9月の終わりに行われていた文化祭だが、早く受験体制を整えたいのと、授業時間を確保したいとのことで、今年度から8月の末に行われることになった。

 生徒たちは、授業を犠牲にすることなく、夏休みを利用して文化祭の準備に専念できるというわけだ。



 古庄は、その準備を自分だけの手に余るものだから、みのりに助けを求めてきた。みのりは副担任なので、当然と言えば当然なのだが。

 副担任をする1年5組の企画は、「暗闇迷路」。文化祭で毎年どこかの組がやっているような、ありがちな企画だ。


 窓に暗幕を張り、机と段ボールで迷路を作るという、いたって単純なものだけれども、暗幕・段ボールやガムテープなどの用具を集めたり、設計図を書いたり、準備は何かと煩雑だ。




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