Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 それは、採用試験の勉強で、みのり自身が作り上げたノートだった。大きい字、小さい字、いろんな色のペンで、ノートの余白がないくらいびっしりと書き込まれている。
 その詳細さに、遼太郎は驚いて息を呑んだ。


「書き込みすぎて、何が何やら判らなくなってるけどね……自分で書いてるから、どこに何が書いているのかは、分かるのよ……。」


と、みのりは少し恥ずかしそうに、小さく笑った。


「これを狩野くんにあげてもいいけど、これは採用試験用の内容だし、やっぱりノートをまとめる過程で知識が定着されるからね。自分で作ったノートじゃないと、あんまり役に立たないと思うし…」


 そう言いながら、みのりは遼太郎にノートを差し出した。ピンク色のノートには、かわいいキティちゃんの絵がある。その絵柄を、思わず遼太郎は凝視した。


「このノート、嫌?貰い物なんだけど、今新しいノートはこれしか持ってないのよ。これが嫌なら、購買で……。」


「いや、このノートでいいです。」


 遼太郎が両手で受け取ったとき、


「おお!狩野!!やってるな!」


と、大きな声と共に大股の足音が近づいてきた。



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