Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
お湯を沸かし、ティーカップを出し、みのりが紅茶を淹れる準備をしていると、石原が背後から話しかける。
「今日、ラグビー部の二俣と狩野と衛藤に会ったんだけど、みのりちゃんからもらったっていうクッキーを持ってたよ。」
「…ああ、あれ。明日、試合があるから応援に来てくれって言われたんだけど、仕事で行けないって言ったら、しょんぼりしてて…。それで、元気づけようと思ってあげたんです。」
思い出すと笑えてきて、思わず口元が緩んでしまう。
「あいつらには1年の時以来会ってないけど、デカくなっててびっくりしたよ。二俣は想像できたけど、狩野はずいぶん鍛えたんだろうな。まだ細いけどマッチョに変わってたね。」
「狩野くんは真面目だから。」
フッとみのりが笑ったとき、ちょうどお湯が沸いて火を止めた。
茶葉の入ったポットにお湯を注ごうと、ポットのふたを取り、やかんに手を伸ばそうとした時、
「あっ……?」
みのりは石原に背後から抱きしめられた。
その瞬間の感覚は、つい最近に経験したものとまるで同じだった。
ほんの1週間前の文化祭での衝撃がオーバーラップする。同じような体勢で、同じようにみのりを抱きしめた遼太郎の逞しい腕――。