Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
以前のみのりならば、石原にこんな風に言われたなら、無邪気に無上の喜びを感じていたはずだ。
自分の中の微妙な変化を感じながら、みのりは何も言わずに、まだ鼓動が速い石原の胸の上に耳を付けた。
その時、また石原の携帯電話が鳴り始める。
今度はさすがに、石原もそちらの方に目をやった。みのりも上半身を起こして、脱ぎ捨てられた石原のジーンズのポケットが音の源だと確認した。
「電話に出て。…….お願い。」
石原の胸に手をついて、みのりは懇願した。
みのりのこの言葉に、石原は不服そうなため息を吐き、起き上がる。
「生徒が何か問題でも起こしたか……?」
と、ジーンズのポケットをまさぐって、電話に出た。
「はい。……ああ、どうした?」
突然、石原の声色が変わったので、みのりは直感で相手は奥さんだと判った。
みのりは息を呑み、体中の血液が凍り付いていくような感覚に震えた。ベッドの上のタオルケットを胸元に引き寄せ、石原の様子をただ見守るしかできない。
「えっ…!それで、今は病院か?……入院?……ああ。でも、飲んでるからすぐに運転できるかどうか……。ああ、わかった。出来るだけ早く向かうよ。」