Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
電話の様子からだと、何かただ事ではない出来事があったらしい。
通話を終えた石原は、不安で表情をこわばらせるみのりに向き直った。
「紗弥…、娘が、入院したらしい。」
「入院!?」
やはり、ただ事ではなかった。みのりは血の気がスーッと引いていくのが分かった。
「もともと、ぜんそく持ちでね。今晩は特にひどい発作が起こったらしくて、救急車を呼んだそうだ。」
事態の深刻さに、みのりは目眩がした。
動揺が体中を駆け巡っていたが、大きく呼吸をして、今自分がすべきことは何なのか考えた。
「……じゃあ、病院へ行ってあげなきゃ……。」
みのりはタオルケットを置いて、裸のまま立ち上がって、石原の洋服を手に取った。
石原は、まるで自分を納得させるように、無言で何度か頷いていたが、
「……今日はずっと一緒にいられると思ったのに、こんなことになって、ごめん……。」
と、唇を噛んでみのりを抱きしめた。
みのりの顎が震えて、涙で目が潤んでくる。その気配を察して、みのりをなだめようと思ったのか、石原は言葉を続けた。
「でも、酒を飲んでるって言ったから、もう少しここに…….。」
しかし、石原のこの言葉は、みのりを慰めるどころか、却ってその心を鋭くえぐった。