Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「それじゃ。」


と、石原が短く言う。みのりも、


「気を付けて……。」


と、短く答えて、唇を噛んだ。


 ドアノブにかけた石原の手が、突然みのりの腕を掴んで、みのりは再び力強く引き寄せられる。
 石原の胸に顔がぶつかり、驚いて息を抜く間もなく、みのりの唇は石原のそれによって塞がれた。

 いつも帰り際にみのりの方からするキスとは比べようもないくらいの、深く情熱的なキス。

 キスを受けながら、みのりは覚悟を決めた。
 みのりも石原の首に腕を回して引き寄せると、何度も方向を変え唇は重ねられた。石原の息遣い、触れ合う感覚、短い間に感じ取れるすべてを、みのりの記憶の中に刻みつけた。


「……また、近いうちに会える機会を作るよ。」


 口づけの後の荒い呼吸のまま、石原が囁いた。いつの間にかみのりの頬を伝っていた涙を、石原の親指の先が拭う。


 みのりは無言で薄く作り笑いをして、ゆっくりと首を横に振った。

 その仕草の意味を解しかねた石原は、首を傾けたが、


「早く、行ってあげて。」


 みのりは、ただそう言って、石原をドアの外に送り出した。



 石原の車のテールランプが、夜の闇に溶けていくのを、以前のように見送った。
 でも、石原の言うように「また」見送ることはないだろう。


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