Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「えー!?女の子と正々堂々と手が繋げるチャンスなのに、出なくていいの?」


 信じられないという感じで、みのりが肩をすくめながら確かめても、


「別に、手なんか繋ぎたくないし……。」


と、遼太郎はにべもない受け答えをする。

 年頃の男の子なのに、女の子に興味がないのだろうか……?


 みのりは目をパチパチさせていたが、気を取り直してガーゼの面を替え、遼太郎の胸に付いた血を拭き取り始めた。


――だって、その辺の女子と手を繋ぐよりも、先生に手当てしててもらいたいし……。


 遼太郎が、そうぼんやり思った瞬間、ガーゼ越しに胸の上を滑るみのりの指の感触を、突然意識した。

 その心の動揺を受けて、遼太郎の体がピクリとこわばる。


「ちょっと、動くと拭き取りにくいわ。」


 遼太郎の体が動かないように、みのりの左手が背中側に添えられる。

 その瞬間、遼太郎の全身に鳥肌が立った。


「寒いの?鳥肌立ってるよ?」


 みのりの問いに、ただ首を横に振ることしかできない。


 テントの外では、フォークダンスの音楽がにぎやかに流れ始めた。みのりの方も作業に没頭していて、お互い無言のまま時間は過ぎていく。


「さーて、ほぼ拭き取ったかな?」


 みのりは一歩下がって、遼太郎の上半身を改めて見直した。



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